細胞を人工的に再構成して生体組織を作製する工学技術は生体組織工学とよばれ,再生医療や創薬,バイオハイブリッドロボットなど様々な応用が期待されています.
生体組織工学における課題の1つとして,作製する細胞組織の再現性・均質性を担保することが挙げられます.特に,心臓や筋肉,上皮を構成する細胞は特定の方向に配向する性質を持ち,この配向性を制御することが重要となります.
しかし,このような細胞組織の構造設計は実験者の経験則や試行錯誤に基づいており,実験前に数値設計を行うという方法論は,まだ確立されていません .
そこで私たちの研究グループでは,配向性を示す細胞集団が物理的にはネマチック液晶とよばれる棒状分子の配向構造と同様な振る舞いを示すことに着目し,ネマチック液晶理論に基づいた 細胞組織の解析・設計理論を構築しています.
特に,ネマチック液晶の配向は調和関数を用いて記述されることを用い,複素関数論を応用することで単連結領域における細胞配向構造の陽公式を与え,どのような配向構造が生じるかをエネルギー最適化によって予測する方法論を確立しています.また,構築した理論の検証を実際に培養実験によって行っています.
発表文献